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2008/05/01

Vol. 1 「COCON KARASUMAに流れる時間」 隈 研吾

隈研吾
隈 研吾/建築家
1954年横浜生まれ。1979年東京大学建築学科大学院修了。コロンビア大学客員研究員を経て、隈研吾建築都市設計事務所主宰。2001年より慶應義塾大学理工学部教授。1997年「森舞台/登米町伝統芸能伝承館」で日本建築学会賞受賞、同年「水/ガラス」でアメリカ建築家協会ベネディクタス賞受賞。2002年「那珂川町馬頭広重美術館」をはじめとする木の建築でフィンランドよりスピリット・オブ・ネイチャー 国際木の建築賞受賞。近作にサントリー美術館。著書に「負ける建築」(岩波書店)「新・建築入門」(ちくま新書)

「すごい床」との出会い。
 COCON KARASUMAの設計を依頼されて、1938年に建設された旧丸紅ビルの印象は今も鮮明である。
 「すごい床だ!」と感じた。オフィスビルだと聞いていたのに、寄木細工の木の床がそこにあった。それもペラペラの今時のフローリングではない。ずっしりと木の厚みがある、本物の寄木細工の床が懐中電灯で照らされてにぶく光っていた。
 僕は建築を設計する時、とりわけ床の材料を重要視する。壁や天井の材料よりも床の材料の方が何倍も重要である。なぜなら人間の身体は直に床にさわるからである。壁にはめったにさわらない。天井にはほとんどさわらない。しかし、床にさわらずにいる事は不可能である。身体は床の材料のやわらかさ、あたたかさ、ざらざらを直接足裏で感じる事ができる。壁や天井は視覚を媒介しかし、床だけは視覚のようなまどろっこしいものを媒介とせずに、直接身体に訴えてくる。だから、建築デザインというのは要するに床のデザインなんだというくらいに僕は床を大事にしている。とする。
1階玄関ホール
 この鈍く光る木は何だろうかとサンプルを送ってみたら、何と「イペ」だという答えがかえってきた。イペは南洋の木材で日本には生えていない。耐久性があり、雨、風にさらされても30年位は長持ちする。そんな木を南洋から輸入してオフィスの床全部を作ってしまうとは、いったいどんな時代だったのだろうか、いったいどんなクライアントだったのだろうか。
寄木フローリング
 僕の想像は、1938年の京都の上空から遠く南洋の海上に到りやがて熱帯雨林のじめじめと湿った地面の上に着地した。この床の上を歩いていると、その湿り気が足裏に伝わってきて今でもぞくっとする。

隈研吾建築都市設計事務所

唐長文様「天平大雲」