
畑 正高/(株)松栄堂 代表取締役社長
昭和29年 京都生まれ。大学卒業後、香老舗 松栄堂に入社。平成10年、同社代表取締役社長に就任。
香文化普及発展のため国内外での講演・文化活動にも意欲的に取り組む。平成16年ボストン日本協会よりセーヤー賞を受賞。 環境省 かおり環境部会委員、同志社女子大学非常勤講師などの公職も務める。
著書に「香三才」(東京書籍)、関連書籍として「香千載」(光村推古書院)などがある。
昭和29年 京都生まれ。大学卒業後、香老舗 松栄堂に入社。平成10年、同社代表取締役社長に就任。
香文化普及発展のため国内外での講演・文化活動にも意欲的に取り組む。平成16年ボストン日本協会よりセーヤー賞を受賞。 環境省 かおり環境部会委員、同志社女子大学非常勤講師などの公職も務める。
著書に「香三才」(東京書籍)、関連書籍として「香千載」(光村推古書院)などがある。
京都の金融街として親しまれている四条烏丸。京都の地図を広げると、市街地の中央に位置する十字交差点。金融街として活力のある日々を送ると同時に、商店街の入り口としても親しまれている。近くには、京の台所・錦市場や繊維問屋街で有名な室町も控え、この界隈の賑わいは京都の活力のバロメーターと言って過言では無い。
日頃は実に煩雑なこの交差点が、一年に一度だけ空気を改め特別の朝を迎える。7月17日午前9時、あの祇園祭の山鉾巡行はこの交差点から出発する。平成20年のその朝は、歴史に残る快晴だった。東にまっすぐ伸びる四条通の彼方には、東山を背にして八坂神社のお社が遠望できる。日本一の朝日は、その社殿の上から、山鉾巡行を待つ人々の中に盛夏の陽射しを射し込んでいた。
昨夜まで、数日間続く宵山に連日数十万人の人出があって、祭りの興奮は高潮している。しかし、この朝を迎えると人々のまなざしは一変して、街は静粛な緊張感を迎える。幸せなことに、私は満十歳の時からこのお祭りに縁を得て、四十数年間、毎年のようにこの清々しい朝を仲間とともに迎えてきた。
私は、祭礼の先頭を行く長刀鉾の囃子方として笛を吹いている。子どものときに鉦方に参加して、24歳の時、笛方に転じた。わが囃子方は80名ほど。小学校の子供から70歳代の長老まで、日常の仕事などまったく無関係に一切の利害関係もなく、ただ祭囃子のためだけに毎年みんなが参集してくる。年齢の序列に対する意識にはとても厳しいけじめがあって、それが自然と各自の胸の中に責任感や誇りを育んでいる。長刀鉾の上にはおおよそ45人ほどのメンバーが乗り込む。他に稚児の関係が10数名。8畳ほどの空間は、蒸し風呂と化す。左右の欄縁が囃子方の席で、それぞれに9名ずつ半身を外へ乗り出すように腰を掛ける。その左側一番先頭は、笛方の中堅リーダーが務める席。私たちの吹く能管は両手を顔の右側に揃え、その分、少し左肩を覗くように姿勢を取る。先頭をゆく長刀鉾の左先頭に座し笛を構えると、目の前には静粛な都大路が広がり、山鉾を待ち望む群衆の熱い視線に圧倒される。
日頃は実に煩雑なこの交差点が、一年に一度だけ空気を改め特別の朝を迎える。7月17日午前9時、あの祇園祭の山鉾巡行はこの交差点から出発する。平成20年のその朝は、歴史に残る快晴だった。東にまっすぐ伸びる四条通の彼方には、東山を背にして八坂神社のお社が遠望できる。日本一の朝日は、その社殿の上から、山鉾巡行を待つ人々の中に盛夏の陽射しを射し込んでいた。
昨夜まで、数日間続く宵山に連日数十万人の人出があって、祭りの興奮は高潮している。しかし、この朝を迎えると人々のまなざしは一変して、街は静粛な緊張感を迎える。幸せなことに、私は満十歳の時からこのお祭りに縁を得て、四十数年間、毎年のようにこの清々しい朝を仲間とともに迎えてきた。
私は、祭礼の先頭を行く長刀鉾の囃子方として笛を吹いている。子どものときに鉦方に参加して、24歳の時、笛方に転じた。わが囃子方は80名ほど。小学校の子供から70歳代の長老まで、日常の仕事などまったく無関係に一切の利害関係もなく、ただ祭囃子のためだけに毎年みんなが参集してくる。年齢の序列に対する意識にはとても厳しいけじめがあって、それが自然と各自の胸の中に責任感や誇りを育んでいる。長刀鉾の上にはおおよそ45人ほどのメンバーが乗り込む。他に稚児の関係が10数名。8畳ほどの空間は、蒸し風呂と化す。左右の欄縁が囃子方の席で、それぞれに9名ずつ半身を外へ乗り出すように腰を掛ける。その左側一番先頭は、笛方の中堅リーダーが務める席。私たちの吹く能管は両手を顔の右側に揃え、その分、少し左肩を覗くように姿勢を取る。先頭をゆく長刀鉾の左先頭に座し笛を構えると、目の前には静粛な都大路が広がり、山鉾を待ち望む群衆の熱い視線に圧倒される。

長刀鉾より「鉾の辻」を望む
四条烏丸の交差点で出発を待つ長刀鉾の後ろには、決められた順番に次々と山や鉾が集まってくる。四条室町の交差点は「鉾の辻」とも呼ばれ、東西南北の四方すべてに巨大な鉾が控えている。その鉾がズシリと動き出し、指定の位置に揃う頃には、数多くの山たちもその間に態勢を整える。長刀鉾の後ろの隙間からその絶景を望むのも、実に贅沢な瞬間だ。「ほらほら、鶏が出てきた!」などと、緊張のひと時を楽しんでいる。
9時。「お囃子お願いします!」との声を聞いて、太鼓方が「ウン、ソーレ!」そして「テン・・・テン・・・」と気合いのこもった太鼓の響きを聞いた音頭取が「エンヤラヤー」と威勢の良い声を上げる。グラリッといよいよ長刀鉾が動き出した。
四条烏丸の緊張の朝、日本一の朝。この朝を迎えることが、私の幸せな節目となっている。
9時。「お囃子お願いします!」との声を聞いて、太鼓方が「ウン、ソーレ!」そして「テン・・・テン・・・」と気合いのこもった太鼓の響きを聞いた音頭取が「エンヤラヤー」と威勢の良い声を上げる。グラリッといよいよ長刀鉾が動き出した。
四条烏丸の緊張の朝、日本一の朝。この朝を迎えることが、私の幸せな節目となっている。
